インド市場で伸びる日本企業:鴻池運輸とエア・ウォーターの成長戦略
- インド市場の構造的成長背景
- 鴻池運輸とエア・ウォーターのインド展開戦略
- 中長期投資視点での注目ポイントとリスク要因
世界最大の人口を抱えるインドは、今やグローバル投資家の注目を集める成長市場です。
そして若年層の多さ、都市化の進行、そして政府主導の産業振興政策など、これらが相まって、インド市場は今後数十年にわたって構造的な成長が見込まれています。
そんな中、筆者が特に注目しているのが、鴻池運輸(9025)とエア・ウォーター(4088)の2社です。
物流と産業ガスという分野で、インドの経済発展を支える存在として着実に現地展開を進めています。
本記事では、インド市場の成長背景を踏まえつつ、鴻池運輸とエア・ウォーターがどのような戦略でインドに進出しているのかを詳しく見ていきます。
中長期の投資テーマとして「インド関連銘柄」を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
インド市場の成長背景
インドは2023年に中国を抜いて世界最大の人口を抱える国となりました。

そしてその約半数が30歳未満という若年層中心の人口構成は、今後数十年にわたる消費拡大と労働力供給を約束するものです。
さらに、モディ政権による「Make in India」政策やインフラ投資の加速により、製造業・物流・医療などの分野で外資企業の参入が活発化しています。
このように、構造的な成長環境の中で、日本企業も着実にプレゼンスを高めつつあります。
鴻池運輸のインド戦略:鉄鋼・フォワーディング・鉄道輸送で成長加速へ
鴻池運輸は、創業140年を超える老舗総合物流企業です。
そして国内では医薬品・精密機器・食品などの高付加価値物流に強みを持ち、海外展開にも積極的です。
なお、現在は海外売上比率は約13%とまだ限定的ですが、北中米・インドを中心に海外事業の拡大を本格化させています。
特にインドでは、鉄鋼関連事業・フォワーディング(国際貨物輸送)・鉄道輸送など、複数の分野で着実に事業基盤を構築中です。
鴻池運輸のインド事業は「今まさに始動」
鴻池運輸のインド事業は、まだ売上規模こそ小さいものの、複数の分野で着実に事業が立ち上がりつつあります。
そして鉄鋼・インフラ・国際輸送といった成長領域において、現地ニーズに応じたサービス展開が始まっています。
まさに、“第二の創業地”としての布石が打たれ始めています。
- インドでは製造業・インフラ分野の物流需要が急増
- 鴻池運輸は日本で培った専門性を活かし、現地課題の解決に貢献
数年で売上4倍も視野に!
なお、決算説明資料で述べられているように、インド市場は数年で売上4倍増が見込まれる成長領域です。
そしてインド事業はまだ立ち上げ段階ということもあるので、成長の伸びしろが期待されています。

また、現地法人の拡充、人材育成、鉄道インフラとの連携などを通じて、持続的な収益基盤の構築を目指しています。
鴻池運輸の株主還元と安定性

物流企業という抜群のディフェンシブ性のある高配当銘柄で、近年は連続増配を続けています。
しかもいまだに配当性向は30%以下を維持しています。
これは、上場企業の中では高いとは言えない水準です。したがってさらなる増配を見込むことも可能です。
エア・ウォーターのインド展開:産業ガスで製造業を支える
エア・ウォーターは、産業ガス・医療・農業・食品など多角的に事業を展開する企業です。
そして特に産業ガス分野では、鉄鋼・化学・半導体などの製造業に不可欠なインフラを提供しています。
エア・ウォーターのグローバル展開とM&A戦略
2000年以降、エア・ウォーターは国内外で累計245社のM&Aを実施しています。
そしてこの積極的な買収戦略により、事業領域を拡大しながら、地域ごとのニーズに対応する柔軟な供給体制を築いてきました。
さらに、以下に引用する決算説明資料のようにインド事業にフォーカスしています。

現在の海外売上比率は約10%と決して高くない水準です。
したがってインド市場の拡大を「最重要成長戦略」と位置づけており、今後の海外比率の上昇が期待されています。
エア・ウォーターのインド市場でのポジションと成長目標
製造業の拡大に伴い、産業ガスの需要が急速に高まっています。
エア・ウォーターはこの成長分野において、すでに有力な供給ポジションを築います。
そして今後の市場拡大に合わせて事業規模を大きく伸ばす計画です。
- FY2023時点でのインド売上は約100億円
- FY2027までに300億円規模への成長を目標
- 成長ドライバー:現地プラントの増設、供給網の強化、現地企業との提携
エア・ウォーターの株主還元と安定性

エア・ウォーターは2000年以来減配なしという安定的な配当実績を持ち、配当性向は約30%です。
さらに、株主優待制度も導入しており、毎年1500円相当の自社製品(食品・飲料など)が贈呈されます。
このような株主還元姿勢は、長期保有を前提とする投資家にとって大きな魅力です。
投資家視点での注目ポイント
指標は8月末時点の値です。
| 企業名 | 配当利回 | 主力分野 | インド展開の特徴 |
|---|---|---|---|
| 鴻池運輸 | 3.25% | 鉄鋼・物流 | 鉄鋼・フォワーディング・鉄道輸送の拡充で数年で4倍目標 |
| エア・ウォーター | 3.04% | 産業・医療ガス | 現地プラント建設と医療供給体制の強化+FY2027に売上300億円目標 |
リスクと分散投資の考え方
- 為替リスク(インドルピーの変動)
- 政策変更による規制リスク
- 現地パートナーとの連携課題
これらのリスクを踏まえつつ、インド関連銘柄はポートフォリオの一部として中長期で保有するのが賢明です。
まとめ:インド関連銘柄としての魅力
インド市場は、人口・経済・産業の三拍子が揃った「次の成長フロンティア」です。
したがって、インド関連銘柄は単なる海外展開ではなく“次の成長軸”として注目すべきテーマです。
そして鴻池運輸とエア・ウォーターのように、現地ニーズに根ざした事業を展開する企業は、長期的な視点での資産形成において有力な選択肢となるでしょう。
今後の決算や現地展開の進捗をウォッチしながら、あなたのポートフォリオにも「インドの未来」を組み込んでみませんか?

