AIに仕事を奪われる?それともAIで成長する?船井総研とインソースを比較してみた
「AIに仕事を奪われる」という話を、最近はあちこちで聞くようになりました。
文章を書く、資料を作る、データを分析する、問い合わせに答える。これまで人間が時間をかけていた仕事を、生成AIが短時間でこなせるようになっています。
では、企業向けのコンサルティングや研修を提供している会社はどうでしょうか。
AIが賢くなればなるほど、コンサルタントや講師の仕事そのものが不要になるのでしょうか。それとも、AIを活用できる企業ほど成長していくのでしょうか。
今回は、企業の経営コンサルティングを手掛ける船井総研ホールディングス(9757)と、企業研修・人材育成を手掛けるインソース(6200)を比較してみます。
私はどちらも保有しています。


そしてどちらも「人の成長」を支援する会社ですが、AIとの関係はかなり違います。
結論から言えば、現時点では「AIを成長エンジンとして事業に組み込み始めている」という点で、私はインソースをやや高く評価します。
ただし、船井総研にも大きな可能性があります。
むしろAIが普及すればするほど、「AIを導入したいけれど、何をどう変えればいいのかわからない」という企業が増える可能性があります。そこに船井総研のコンサルティング力がハマれば、AIが同社の成長を加速させるシナリオも十分に考えられます。
果たして、AI時代に有利なのはどちらなのでしょうか。


船井総研とインソースは何をしている会社なのか
まず、両社のビジネスモデルを整理しておきましょう。
船井総研ホールディングスは、中堅・中小企業を中心に経営コンサルティングを提供しています。
月次支援コンサルティング、経営研究会、M&A支援など、企業経営に深く入り込んで支援するのが特徴です。
一方のインソースは、企業研修を中心とした人材育成サービスを展開しています。
講師派遣型研修、公開講座、動画・eラーニング、ITサービスなどを展開しており、近年はDXや生成AI関連の教育にも力を入れています。
つまり、かなり大雑把に言えば、
船井総研=企業経営そのものを支援する会社
インソース=企業で働く人材の教育・成長を支援する会社
という違いがあります。
この違いが、AI時代の成長戦略にも大きく影響してきます。
船井総研はAIに仕事を奪われるのか?
船井総研にとってAIは、単純な「脅威」ではありません。
むしろ、使い方次第ではかなり大きな追い風になります。
なぜなら、AIを導入した企業が必ずしもAIを使いこなせるわけではないからです。
「生成AIを導入したけれど、結局社員が使っていない」
「AIエージェントを導入したいが、どの業務から始めればいいかわからない」
「AIを使えば効率化できそうだが、業務そのものをどう変えればいいかわからない」
こうした問題が出てくれば、AIそのものを売る会社だけでなく、AIを経営にどう組み込むかを支援する会社にもビジネスチャンスが生まれます。
実際、船井総研はAI・AIエージェントの導入支援サービスを展開しており、投資対効果の見立てから戦略立案、本番開発、現場への定着、継続改善まで一気通貫で支援するとしています。
これは、単に「ChatGPTの使い方を教えます」という話とは違います。
企業の業務そのものを分析し、
「この仕事はAIに任せる」
「ここは人間が判断する」
「この業務にはAIエージェントを導入する」
といったところまで踏み込めれば、コンサルティング会社としての価値はむしろ高まる可能性があります。
ただし、船井総研にはAI時代ならではのリスクもある
一方で、AIが船井総研にとって完全な追い風になるとも限りません。
これまでコンサルタントが時間をかけて行っていた市場調査、資料作成、情報整理、分析などは、AIによって効率化できます。
つまり、コンサルタント1人が生み出せる仕事量が増える一方で、顧客が自社でできることも増えるわけです。
ここは非常に重要です。
AIによってコンサルタントの生産性が上がれば、船井総研の利益率改善につながります。
しかしAIによって「コンサルタントに頼まなくても自社で分析できる」という企業が増えれば、従来型のコンサルティング需要は縮小する可能性があります。
船井総研にとってAIは、武器にもなれば競争相手にもなるということです。
それでも船井総研には大きな強みがある
私は船井総研の強みは、AIそのものではなく、企業経営について蓄積してきた顧客基盤とコンサルティング能力だと考えています。
AIはどんどん高性能になっています。
しかし、AIに「会社を成長させてください」と頼めば、それだけで企業が成長するわけではありません。
どの市場に進出するのか。
どの商品を伸ばすのか。
営業組織をどう変えるのか。
人材をどう配置するのか。
AIをどの業務に導入するのか。
こうした問題には、企業ごとの事情があります。
船井総研がこれまで蓄積してきた業種別の経営ノウハウと顧客基盤をAIと組み合わせられるのであれば、かなり強いビジネスになる可能性があります。
実際、2026年12月期2Qでは、船井総研の中堅企業化コンサルティングの売上高が前年同期比112.0%増、M&Aも128.4%増と大きく伸びています。全体では売上高168.25億円、営業利益47.36億円で、2Q累計として過去最高となりました。
ただし、売上高の伸びは4.9%にとどまり、通期会社予想は売上高370億円、営業利益91億円です。上期売上高の進捗率は45.5%で、下期に成長を加速できるかが重要になります。
つまり、船井総研はAIの可能性を持っているものの、現時点では「AIによって業績が爆発的に伸び始めた会社」とまでは言えません。
ここは冷静に見ておきたいところです。
インソースは「AIに仕事を奪われる側」なのか?
ではインソースはどうでしょうか。
こちらは船井総研以上にAIの影響を受けそうな会社です。
なぜなら、インソースの中心事業である「研修」は、AIによって一部が代替される可能性があるからです。
AIに質問すれば、ビジネススキルを教えてもらえます。
文章の書き方も教えてくれます。
プログラミングも教えてくれます。
資料作成も手伝ってくれます。
そう考えると、
「わざわざ人間の講師から研修を受ける必要があるのか?」
という疑問が出てきます。
これはインソースにとって、かなり重要な問題です。
しかし、インソースはここに対して、かなり明確な答えを出しています。
同社は、知識を与えるだけの教育は生成AIで代替され得る一方、職場での実践を目的としたワークやロールプレイング、気づきなどはAIだけでは代替しにくいと説明しています。
これは非常に重要なポイントです。
つまりインソースは、
「AIと競争する研修会社」ではなく、「AIでは代替しにくい部分に研修の価値を移しながら、AIそのものも商品にする会社」
へ変わろうとしているわけです。
インソースはAIを「売る側」に回り始めている
インソースの面白いところはここです。
生成AI関連研修を提供するだけではありません。
AIエージェントやAIアプリケーション、AI-OJT、AI-Plantsなど、AIを組み込んだサービスを展開しています。さらにAIを活用した社内業務の効率化にも取り組んでいます。
そして、その成果が少しずつ数字にも表れてきました。
2026年9月期3Qでは、1~3Q累計の売上高が115.82億円で前年同期比8.9%増、営業利益は44.48億円で3.7%増となっています。
さらに注目したいのが生成AI関連研修です。
3Qの生成AI関連研修の売上高は、前年同期比2.7倍まで伸びています。提案金額も前年同期比69%増加しました。
これは、単に「AIに対応しています」とIR資料に書いてあるだけではありません。
実際にAI関連サービスの売上が伸び始めている
という点が重要です。
しかもインソースは、自社の業務にも生成AIを導入しています。
2026年4月以降、グループ全体で665名がAIエージェント研修を受講し、メール作成や販促業務などへの実務利用を進めています。その結果、3Qの総人件費の伸びは前年同期比4.8%増に抑えられ、1Hの16.2%増から大きく改善しました。
ここにはかなり興味深い構造があります。
AIを顧客に売る。
そして、
AIを自社でも使う。
この両方をやっているわけです。
AI時代の成長余地はどちらが大きい?
ここまでを見ると、両社ともAI時代に生き残る可能性は十分あります。
ただし、AIとの距離感が違います。
船井総研の場合は、
「経営コンサルティング+AI」
です。
AIを使って企業変革を支援することで、既存のコンサルティング事業を強化する戦略です。
一方、インソースは、
「教育+AI+コンサルティング+AIアプリケーション」
へと事業領域を広げています。
AIを学ぶための研修を提供し、その先にAI導入支援やAIアプリケーションを販売する。
この構造がうまく回れば、従来の「研修会社」という枠を超えられる可能性があります。
インソースは2028年9月期に売上高234億円、営業利益96.2億円を目標としており、2025年9月期からの売上高CAGR17.3%を掲げています。さらに、AI対応サービスの拡大、コンサルティング強化、AI・コンテンツIPへの積極投資を成長戦略にしています。
もちろん、これは会社側が掲げる目標なので、そのまま達成できると考えるべきではありません。
しかし、少なくともAIを次の成長ドライバーとして具体的な商品・サービスに落とし込もうとしていることは評価できます。
逆にインソースにも大きなリスクがある
インソースが圧倒的に有利、とまでは言えません。
最大のリスクは、AIによる研修そのもののコモディティ化です。
生成AIがさらに進化すれば、企業が研修会社に依頼せず、自社でAIを使って教育コンテンツを作れるようになる可能性があります。
「AI研修」も、競合他社が簡単に参入できるようになるかもしれません。
したがって、インソースが本当に強くなるためには、単にAI研修の種類を増やすだけでは不十分です。
LeafなどのSaaS、既存顧客基盤、研修コンテンツ、コンサルティング、AIアプリケーションを組み合わせて、
「インソースに頼むと、教育からAI導入まで全部解決する」
という状態を作れるかが重要になります。
現在のインソースは、まさにそこへ向かっている途中だと考えられます。
船井総研とインソースを比較してみる
ここまでを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 船井総研HD | インソース |
|---|---|---|
| 主力事業 | 経営コンサルティング | 企業研修・人材育成 |
| AIの位置付け | コンサルティングの高度化 | AI教育・AIサービスを成長分野に |
| 既存事業へのAIの脅威 | 中程度 | 比較的大きい |
| AI関連サービスの成長性 | これから本格化 | すでに売上成長を確認 |
| AIによる生産性向上 | 期待できる | 実際に効果が進行 |
| 顧客基盤 | 強い | 強い |
| ストック型事業 | 月次支援・経営研究会など | SaaS・eラーニングなど |
| AI時代の成長余地 | 大きい | かなり大きい |
| 現時点でのAI成長の確度 | これから検証 | ★ 一歩リード |
こうして見ると、現時点ではインソースに軍配を上げたいと思います。
理由は単純です。
AIを「これから活用します」という段階ではなく、すでにAI関連研修の売上が大きく伸び、AIアプリケーションやAIエージェントなどへ事業を広げているからです。さらに、自社でもAIを活用して人件費の伸びを抑えるなど、業務効率化の効果が出始めています。
一方の船井総研は、AIを活用したコンサルティングという非常に魅力的なポジションにいますが、現時点ではAIが業績を大きく押し上げていることを数字から確認するのはまだ難しい状況です。
では船井総研には可能性がないのか?
もちろん、そんなことはありません。
むしろ私は、AIが普及するほど船井総研の価値が高まるシナリオも十分あると思っています。
AI導入が進めば進むほど、企業には「AIを導入する技術」ではなく「AIを使って会社をどう変えるか」という問題が残ります。
これはまさにコンサルティングの領域です。
船井総研はAI・AIエージェント導入について、投資対効果の見立てから戦略立案、開発、現場定着、改善まで支援するサービスを展開しています。
さらに、2026年12月期2Qでは中堅企業化コンサルティングが大きく伸びています。
もしこの顧客基盤にAIコンサルティングを組み合わせることができれば、
既存顧客へのAI支援 → コンサルティング単価上昇 → 顧客企業の成長 → 船井総研の顧客基盤拡大
という好循環を作れる可能性があります。
これはかなり面白い成長シナリオです。
最終結論:今ならインソースをやや優勢と見る
個人投資家として現時点でどちらを評価するかといえば、私はインソースをやや優勢と見ています。生成AI関連研修の売上が前年同期比2.7倍に伸び、AIエージェントなどの新サービスや自社業務へのAI活用も進んでいるためです。AI・コンサルティング・SaaSなどを組み合わせることで、従来の研修会社からさらに事業領域を広げる可能性があります。
ただし、AIによって研修そのものが代替されるリスクは無視できません。
一方、船井総研はAI導入支援によって、既存の経営コンサルティングをさらに高度化できる可能性があります。AIを成長エンジンとして事業化する力ではインソース、AIによる企業変革の需要を取り込む力では船井総研という見方がフェアでしょう。
現時点ではインソースが一歩リードしていますが、AI導入が企業経営の中心になれば、船井総研が追い上げる可能性もあります。
今後はAI関連売上だけでなく、売上成長率・1人当たりの生産性・営業利益率がAIによって改善しているかを確認したいところです。
AI・DX・IT推進サービス―デジタル分野の研修・動画教育・人材育成はインソース

