また負担増?金融所得と社会保険、外貨課税の“いま知るべきこと”
「貯蓄から投資へ」と国が後押ししてきた流れの中で、NISAを使って投資を始めた人も多いと思います。ところが最近、投資家にとって気になるニュースが相次いでいます。
ひとつは、株や投資信託の利益が将来の社会保険料に反映される仕組みが法律として成立したこと。もうひとつは、昔買って保有していたドルで米国株を買っただけでも、為替差益に課税される可能性があるという最高裁判決です。
「税収は過去最高なのに、なぜまだ負担が増えるのか」と感じる人も多いでしょう。私自身もその違和感はあります。ただ、感情だけで終わらせず、誰にどんな影響があるのかを整理しておくことが大切です。

株の利益が社会保険料に反映される時代へ
まず押さえておきたいのは、今回の制度変更の対象が75歳以上の後期高齢者医療制度だという点です。
これまでは、源泉徴収ありの特定口座で得た配当や売却益について、確定申告をしなければ、保険料や病院窓口負担の判定に反映されにくい仕組みがありました。ところが、2026年5月に成立した改正法により、申告していない金融所得も将来的に判定へ反映できるようになります。
例えば、年金収入150万円の75歳の人が、年間50万円の配当を受け取っているケースでは、保険料が大きく上がる可能性があります。さらに、所得判定によって窓口負担が1割から2割に引き上げられることもあります。
ここで重要なのは、「配当50万円なんて富裕層の話」とは言い切れないことです。配当利回り4%なら元本は1250万円、2%でも2500万円です。長年コツコツ積み立ててきた老後資金としては、十分あり得る金額でしょう。
すぐに慌てる必要がある人、ない人
30代や40代で、NISAでS&P500や全世界株式を積み立てている人は、現時点では大きく動く必要はありません。今回の制度はNISA口座が対象ではなく、しかも75歳以上が直接の対象だからです。
一方で、50代・60代の人は一度確認しておきたいところです。
この4つを「見える化」しておくと、将来の出口戦略が立てやすくなります。
制度の実施は「交付後5年以内」とされており、遅くとも2031年ごろまでに始まる可能性があります。まだ時間はありますが、“利益をいつ出すか”を考える時代になったということです。
外貨課税の最高裁判決、何が問題なのか
次に、もっと誤解されやすいのが外貨課税です。
まず結論から言うと、NISAでオルカンやS&P500の投資信託を円で積み立てている人は、今回の問題の直接対象ではありません。
問題になるのは、株を買う前から保有していたドルなどの外貨資産です。
例えば、1ドル145円のときに2万ドルを購入し、その後160円まで円安が進んだとします。そのドルでApple株をNISA口座で買った場合、株はまだ売っていなくても、ドル自体に約30万円の為替差益が発生しています。
この差益は、NISAの非課税とは別で、雑所得として総合課税の対象になり得ます。給与所得などと合算されるため、所得が高い人は住民税を含めて最大55%程度の税率になる可能性があります。
「NISAでも55%課税」は誤解
ここは見出しだけが独り歩きしやすいところですが、整理するとこうです。
つまり、「NISAでも課税される」のではなく、NISAの外側にあるドルの利益が課税されるという話です。
しかも、この課税ルール自体は新設ではありません。以前から存在していたものの、解釈が曖昧だった部分に、2026年6月の最高裁判決で「外貨を外貨建て資産に交換した時点でも利益を認識できる」という判断が示された、という位置づけです。
最高裁ですら、制度が分かりにくいことを補足意見で指摘しています。普通の個人投資家にとって、「いつ、いくらでドルを買い、どのドルをいつ使ったか」を管理するのは、かなりハードルが高いのが実情でしょう。
対策はシンプルに考える
では、どうすればいいのでしょうか。
円で投資信託を積み立てている人は、基本的に今まで通りで問題ありません。
これから個別の米国株を買う人で、税務をシンプルにしたいなら円貨決済を選ぶのが無難です。外貨決済を使う場合でも、買い付けに必要な分だけドル転し、なるべく時間を空けずに購入することで、為替差益を小さくしやすくなります。
昔ドル転して長期間保有している人は、取得日・取得レート・金額・使用日を記録しておきましょう。金額が大きい場合は、税理士への相談も検討したいところです。
税収は過去最高。それでも負担が増える理由
2025年度の税収は84兆円超と、6年連続で過去最高を更新しました。
それなのに、2026年度予算は122兆円規模で、約30兆円を国債、つまり借金で賄う計画です。収入が増えても、それ以上に支出が増えている状態です。
市場は当然、「日本の財政は大丈夫か」と警戒します。すると国債が売られ、長期金利が上昇し、円安が進みやすくなります。
実際、住宅ローン金利の上昇、債券ファンド価格の下落、食料品やエネルギー価格の上昇など、私たちの生活に直結する動きがすでに起きています。
さらに、2026年の「骨太の方針」原案では、これまで使われていた「財政健全化」という言葉が消えました。代わりに「責任ある積極財政」「強い経済」「財政の持続可能性」といった表現が並んでいます。
成長投資そのものを否定するつもりはありません。しかし、税収が過去最高でも負担増の議論が続き、借金も増えるとなれば、「結局、取れるところから取るのでは」と感じるのは自然なことだと思います。
それでも投資をやめる必要はない
今回のニュースを見て、投資のモチベーションが下がった人もいるかもしれません。
でも、私は逆でした。むしろ「NISAをしっかり使っていこう」という気持ちが強くなりました。
制度に言いたいことはたくさんあります。税金や社会保険の仕組みは複雑ですし、個人に管理を求めすぎだとも感じます。
ただ、不満があるからといって投資をやめてしまうのは違います。大切なのは、自分に関係する部分だけを確認し、必要なところだけ修正することです。
長期投資家としての結論
最後に、私ならこう整理します。
具体的には、NISAで全世界株式やS&P500を淡々と積み立てる方針は変えません。これは米国だけでなく、世界中の企業が稼ぐ利益を取り込むことであり、日本だけに資産を集中させない“日本ヘッジ”にもなります。
私たちは制度そのものを選ぶことはできません。でも、自分のお金をどう持つかは選べます。
税制や社会保険の変更に振り回されないためにも、感情ではなく、ルールを理解したうえで冷静に行動する。それが長期投資家にとって一番大切なスタンスだと思います。

