企業業績は絶好調なのに株価は下落?今週の米国株・日本株を徹底解説
株式市場は今週も大きく揺れ動きました。
米国ではS&P500企業の決算が好調だったにもかかわらず、主要指数は軟調な展開となりました。一方、日本株も火曜日には2,000円を超える急騰を見せたかと思えば、週末には1,800円を超える急落となり、まさにジェットコースターのような一週間でした。
こうした値動きを見ると、「何が起きているのか分からない」「今後どう行動すればいいのか」と不安になる方も多いでしょう。
しかし、株価だけを眺めていては市場の本当の姿は見えてきません。企業の業績や景気、金利、投資家心理などを総合的に見ることで、現在の相場がどのような状況にあるのかが見えてきます。
今回は、今週の米国株と日本株の動きを振り返りながら、長期投資家が知っておきたいポイントを整理していきます。
今週の米国株を振り返る|企業業績は好調なのに株価は下落
今週の米国株は全体的に軟調でした。
ダウ平均は小幅安、S&P500もわずかに下落。そしてハイテク株の比率が高いNASDAQ総合指数は2週連続の下落となりました。SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)も週末に大きく下げています。
しかし、ここで重要なのは「株価が下がった=企業が悪くなった」というわけではないことです。
米国企業の利益は過去最高レベル
現在発表されている4〜6月期決算を見ると、企業業績は非常に力強い内容となっています。
7月24日時点ではS&P500企業のおよそ27%が決算を発表しており、そのうち実に86%が市場予想を上回る利益を計上しました。売上高についても80%の企業が予想を超えています。
さらに驚くべきなのは利益成長率です。
特殊要因を除いても、S&P500全体の利益は前年同期比で25.9%増加しています。売上高も13.2%増加し、11業種すべてで増収を達成しています。テクノロジー企業だけでなく、金融やエネルギー、素材など幅広い業種で業績が伸びている点も見逃せません。
つまり、「企業はしっかり利益を稼いでいる」というのが今の米国市場の実態です。
それでも株価が下がる理由
では、なぜ株価は下がっているのでしょうか。
最大の理由は長期金利の上昇です。
米国10年債利回りは4.7%台、30年債利回りは5%を超える水準まで上昇しました。安全資産とされる米国債で年間5%近い利回りが得られるのであれば、投資家は株式に対してそれ以上のリターンを求めるようになります。
特に影響を受けやすいのがAI関連や半導体などの成長株です。
これらの企業は将来の利益を期待されて買われるため、金利が上昇すると企業価値の評価が下がりやすくなります。
企業業績というアクセルは強く踏まれていますが、長期金利というブレーキも同時に強く踏まれている。それが現在の米国株の姿なのです。
原油高も市場の重しに
長期金利を押し上げる要因となったのが原油価格です。
ブレント原油は一時100ドルを突破し、週間では約10%上昇しました。背景には中東情勢の緊張があり、エネルギー価格の上昇がインフレ再燃への警戒感を強めています。
原油価格が上昇すると、ガソリンだけでなく輸送費や電気料金、航空運賃、プラスチック製品など、経済全体のコストが押し上げられます。
さらに、新たな関税政策も重なり、ようやく落ち着き始めていたインフレに再び火種が生まれる可能性も意識され始めました。
投資家心理は本当に悪化しているのか
相場が下落すると、つい悲観的になりがちです。
しかし、市場心理を示すVIX指数は約1か月ぶりの高水準とはいえ20を下回る水準にとどまり、Fear & Greed Indexも「Fear(恐怖)」ではあるものの、極端なパニック状態ではありません。
むしろ、市場全体が楽観一色ではないことは健全とも言えます。
全員が強気になっている相場よりも、適度な警戒感が残っている相場の方が過熱しにくく、長期的には安定した上昇につながるケースも少なくありません。
景気は悪くない。それでも株価が伸び悩む理由
7月の米国総合PMIは53.6と市場予想を上回り、企業活動は拡大を続けています。サービス業も堅調で、米国経済が急速に景気後退へ向かっている状況ではありません。
皮肉なのは、景気が強いこと自体が株価の重しになっていることです。
景気が強ければ消費も活発になり、物価は下がりにくくなります。そうなるとFRBは利下げを急ぐ必要がなくなり、長期金利も高止まりしやすくなります。
その結果、企業業績が良くても株価は思うように上昇できません。
「景気が悪いから株価が下がった」のではなく、「景気と企業利益が強すぎることで金利が下がらず、株価が伸び悩んでいる」。
これが現在の米国市場を理解するうえで最も重要なポイントと言えるでしょう。
今週の日本株を振り返る|乱高下の裏側で企業は着実に成長
今週の日本株も非常に激しい値動きとなりました。
海の日で休場を挟んだ4日間の取引でしたが、火曜日には日経平均株価が2,000円以上上昇した一方、金曜日には1,800円を超える急落となり、多くの投資家を驚かせました。
しかし、このような短期的な値動きだけで日本企業全体の価値を判断するのは早計です。
続けて日本企業の業績や円安・長期金利の影響、そして長期投資家が相場の乱高下とどう向き合うべきかについて詳しく解説します。
日本企業の業績は依然として力強い
日経平均は短期間で大きく上下していますが、日本企業の中身を見ると決して悲観するような状況ではありません。
7月の製造業PMIは54.7と、2014年以来およそ12年ぶりの高い水準となりました。新規受注は5年ぶりの高い伸びを記録し、輸出受注も4か月ぶりに改善しています。サービス業PMIも50を上回り、企業活動は拡大基調を維持しています。
企業業績も好調です。
1〜3月期の経常利益は6四半期連続で増益となり、全産業では前年同期比14.6%増、製造業だけを見ると42.9%という非常に高い伸びとなりました。企業利益の総額は過去最高水準に達しており、日本企業全体の収益力は着実に高まっています。
つまり、金曜日に株価が大きく下落したからといって、日本企業の成長が突然止まったわけではありません。
株価は毎日大きく動きますが、工場の生産能力や受注残、高い利益水準が一晩で消えてしまうことはありません。まずは企業の実態と株価を切り分けて考えることが大切です。
長期金利の上昇が日本株にも影響
米国ほど注目されてはいませんが、日本でも長期金利はじわじわと上昇しています。
日本の10年国債利回りは前週末の2.71%から2.78%へ上昇し、週中には2.82%を超える場面もありました。
金利の上昇は銀行や保険会社にとっては追い風になります。
一方で、企業の借入コストや住宅ローン金利の上昇につながるため、不動産や設備投資、将来の成長期待で買われる企業にとっては逆風となります。
日本でも米国と同じように、「企業業績は良いのに株価が伸びにくい」という構図が少しずつ見え始めています。
円安は追い風だけではない時代へ
今週はドル円が一時164円近くまで円安が進みました。
これは1986年以来、およそ40年ぶりの円安水準です。
以前であれば、「円安=日本株にプラス」という考え方が一般的でした。
確かに海外で売上を伸ばしている企業にとっては、円換算した利益が増えるというメリットがあります。
しかし現在は、それだけではありません。
原油や天然ガス、食料、部品など、日本が海外から輸入しているあらゆるものの価格も上昇してしまいます。
そのため、海外売上の恩恵が輸入コストの増加を上回れる企業なのかどうかが重要になっています。これからの日本株投資では、「円安メリット銘柄」という一言では語れない時代になってきたと言えるでしょう。
短期の値動きより、市場に居続けることが重要
相場が大きく動くと、「今は売った方がいいのでは」「もう少し下がってから買い戻そう」と考えてしまうものです。
しかし、長期投資家にとって本当に重要なのは、完璧なタイミングを当てることではありません。
投資の名著『敗者のゲーム』の著者チャールズ・エリス氏は、20年間のリターンの約3分の2が、わずか数営業日に集中しているというデータを紹介しています。約5,000営業日のうち、ごくわずかな日を逃すだけで、長期リターンは大きく変わってしまうのです。
今年の日本株もまさにその典型でした。
3月末、多くの投資家が不安を感じて市場から離れたタイミングから、日経平均は40%を超える上昇を見せました。底値を事前に見抜けた人はいません。それでも市場に残り続けた人だけが、その恩恵を受けることができたのです。
だからこそ、火曜日の急騰で焦って一括購入したり、金曜日の急落で恐怖からすべて売却したりするような行動は避けたいところです。
長期投資では、「大きく勝つこと」よりも「致命的なミスをしないこと」が何より重要なのです。
投資の目的は、お金を増やすことだけではない
ここで少し視点を変えてみましょう。
今年の夏は旅行者数こそ前年より減少する見込みですが、一人当たりの旅行支出は国内・海外ともに増えると予測されています。円安の影響で旅行費用は高くなっていますが、それでも「行く時はしっかり楽しむ」というメリハリ消費が広がっているようです。
この話は、投資にも通じるものがあります。
資産運用の目的は、証券口座の数字を誰かと競うことではありません。
行きたい場所へ旅行に行くこと。
家族と大切な時間を過ごすこと。
会いたい人に会い、人生の選択肢を増やすこと。
そのためにお金を育てているはずです。
株価ばかりを見て疲れてしまったときは、この原点を思い出すことも大切ではないでしょうか。
今週の全世界株を振り返る|地域ごとに明暗が分かれた一週間
世界の株式市場を見ると、今週は国や地域によって値動きが大きく分かれました。
最近は全世界株式ファンドや欧州株ファンド、アジア株ファンドへの資金流入が続く一方で、米国株ファンドからはやや資金が流出する動きも見られています。ただし、これは直近の資金の流れであり、それまで米国株へ大量の資金が流入していたことを考えると、資金が地域を移動している局面と考えるのが自然でしょう。
今週、特に対照的だったのが韓国と欧州です。
韓国では半導体関連株の下落が目立ち、KOSPI指数は大幅安となりました。サムスン電子やSKハイニックスも大きく値を下げています。一方、欧州ではSTOXX600指数が2週連続で上昇し、ユーロ圏のPMIも改善するなど、景気回復への期待が高まりました。
同じ世界経済の中にあっても、株価を動かす材料は国ごとに異なります。
米国では長期金利、韓国では半導体市況、インドでは原油価格、そして欧州では景気回復が市場のテーマとなっています。つまり、一つのニュースがすべての国に同じ影響を与えるわけではありません。
だからこそ、全世界株へ分散投資する意味があります。
どこか一つの地域が苦戦しても、別の地域が支えることで資産全体の値動きを安定させることができるのです。
長期投資で大切なのは「生き残ること」
資産形成の考え方として参考になるのが、『サイコロジー・オブ・マネー』の著者モーガン・ハウセル氏の言葉です。
ハウセル氏は、「資産形成で最も重要なのは最高のリターンを狙うことではなく、長く市場に居続けること」だと述べています。
複利は時間が味方になって初めて大きな力を発揮します。
しかし、信用取引で過度なリスクを取ったり、一つのテーマに資産を集中させたり、生活費まで投資に回してしまったりすると、大きな下落局面で市場から退場せざるを得なくなります。
ウォーレン・バフェット氏が長年にわたって高いリターンを残せた理由も、優れた銘柄選びだけではありません。
何十年もの間、市場に居続けたことが成功の大きな要因だとハウセル氏は説明しています。
新NISAで人気の投資信託はどう動いた?
ここからは、新NISAで人気の投資信託の値動きを見ていきましょう。
今週の騰落率では、SOX関連ファンドが上位となりました。ただし、SOX指数は金曜日に大きく下落しており、投資信託の基準価額にはタイムラグがある点には注意が必要です。
また、国内株式(TOPIX)ファンドも上位に入りました。
これまで日経平均に比べて出遅れていたTOPIXですが、NT倍率の縮小もあり、見直しの動きが見られています。さらに、ゴールドや新興国株式も堅調な推移となりました。
一方、FANG+は今週こそやや苦戦しましたが、短期の成績だけで判断するのは早計です。
長期で見ると景色はまったく違う
2020年から現在までの累積リターンを見ると、SOX関連ファンドは250%を超える圧倒的な成績を残しています。
FANG+も100%を大きく超えるリターンを記録しており、6年以上の期間で見ても150%を超える高い成果を上げています。
この6年間には、コロナショック、急激なインフレ、利上げ、戦争、関税問題など、「もう株式市場は終わりだ」と言われた局面が何度もありました。
それでも市場に居続けた投資家は、時間と複利の力によって資産を大きく増やしてきたのです。
だからこそ、1週間の値動きだけで長年かけて築く資産形成を壊してしまうのは、非常にもったいないことだと言えるでしょう。
8月・9月は下落しやすい?長期投資家が取るべき行動
株式市場では、8月から9月は軟調になりやすいと言われています。
過去の中間選挙の年を見ると、平均で17.5%程度の下落を経験し、安値を付ける時期も8月から9月に集中しています。
しかし、それだけを見るのは片手落ちです。
過去のデータでは、その後1年間はすべて上昇しており、平均リターンは約32%となっています。また、年後半も高い確率でプラスとなっています。
もちろん、今年も同じ結果になる保証はありません。
それでも、過去の傾向から学べることはあります。
重要なのは、「下落を避けること」ではなく、「下落しても市場に残れる状態を作ること」です。
生活防衛資金をしっかり確保し、近いうちに使う予定のお金は株式へ投資しないこと。そして、一つの企業やテーマに集中しすぎず、借金をして投資もしないこと。値動きの大きい商品は資産の一部にとどめることが重要です。
まとめ|相場に居続けることが最大の武器
今後、8月から9月にかけて相場がもう一段下落する可能性は否定できません。
しかし、その先まで悲観する必要もありません。
歴史を振り返れば、大きな下落のあとに力強い上昇局面が訪れたケースは数多くあります。だからといって、「今が底だ」と決めつけて一括投資をする必要も、「下がる前に売って買い戻そう」とタイミングを狙う必要もありません。
長期投資家にとって最も大切なのは、いつもの日に、いつもの金額を積み立て続けることです。
株価が上がれば資産が増えてうれしい。株価が下がれば、同じ金額でより多くの口数を買える。
そう考えれば、上昇も下落も長期投資家にとっては味方になります。
短期的な値動きに振り回されるのではなく、市場に居続けること。
それこそが、資産形成を成功へ導く最大の武器です。

