株式市場の調整局面はピンチか、それとも15年ぶりのチャンスか
7月最後の1週間は、投資家にとってまさに「試練の1週間」でした。
アメリカではFOMCと巨大ハイテク企業の決算発表が重なり、日本では日経平均が乱高下。さらに政府・日銀による為替介入とみられる急激な円高まで重なり、多くの人が証券口座を開いて「思ったより資産が減っている」と感じたのではないでしょうか。
一方で、こうした値動きを表面的に見るだけでは、今起きていることの本質は見えてきません。
実際には株式市場だけでなく、債券市場や為替市場、原油市場までが複雑に絡み合い、それぞれが今後の景気やインフレを織り込み始めています。そして長期投資家にとって最も重要なのは、「短期的に株価が下がった」という事実ではなく、その背景を理解し、自分の投資方針をぶらさないことです。
今回は今週の市場を振り返りながら、これから数か月の相場をどう考えればよいのか、長期投資家の視点で整理していきます。
米国市場は重要イベントが集中。明暗を分けたAI投資
今週のアメリカ市場は、まさに重要イベントが目白押しでした。
週全体ではS&P500はわずかにプラス、ダウ平均も上昇して終えた一方、NASDAQ100や半導体株指数(SOX)は軟調な展開となりました。しかし、FANG+指数は上昇しており、同じハイテク株でも大きな差が生まれています。
この背景には、FOMCと巨大IT企業の決算があります。
FOMCは据え置きでも市場は大きく反応
今回のFOMCでは政策金利は据え置きとなりました。
一見すると市場予想通りの結果ですが、注目されたのは内容です。
投票メンバー12人のうち3人が追加利上げを主張しました。これはインフレへの警戒感が依然として強いことを意味しています。
この結果を受けて株価は下落し、VIX指数も一時20を超えました。
ただし、ここで重要なのは「VIXが20を超えた」という事実ではありません。
今年3月には30を超える場面もありましたし、今回もわずか2日ほどで16近くまで低下しています。市場心理は一時的に悪化したものの、パニック状態というほどではありませんでした。
今週の主役は株ではなく債券市場
実は今週、本当に大きな変化が起きたのは債券市場でした。
30年国債利回りは2007年以来の高水準まで上昇する一方、2年国債利回りは逆に低下しました。
この動きは非常に興味深いものです。
短期金利は景気の先行きを反映します。
GDP速報値は市場予想を下回り、景気減速への見方が広がりました。そのため「将来的には利下げもあるかもしれない」と考えられ、2年金利は下がりました。
一方、長期金利は将来のインフレを映します。
原油価格の上昇や依然として高い物価指標を受け、「インフレは簡単には収まらないかもしれない」という見方が強まり、30年金利は上昇したのです。
つまり市場は、
「景気は少し減速するかもしれない。しかしインフレも簡単には収まらない。」
そんな難しい状況を織り込み始めています。
中東情勢が再び市場を揺らす
今週は中東情勢も無視できませんでした。
アメリカ軍によるイランへの大規模攻撃を受け、原油価格は急騰しました。ブレント原油は一時90ドルを突破しています。
原油価格が上昇すると企業のコストが増え、物価上昇への懸念が強まります。
すると長期金利が上昇し、高PERで評価されやすい成長株ほど売られやすくなります。
今週NASDAQ100が弱かった背景には、この流れもありました。
市場全体を見ると、エネルギー関連株だけが堅調だったのも納得できます。
AI投資は「いくら使ったか」ではなく「回収できたか」が問われる時代へ
今週最大の注目イベントといえば、
Microsoft、Meta、Apple、Amazonの決算でしょう。
市場が4社に投げかけた質問は非常にシンプルでした。
「AIへの巨額投資は利益につながっているのか。」
年間120兆円規模ともいわれるAI投資が、本当に回収できるのか。
今回の決算では、その答えがはっきり分かれました。
MicrosoftはAzureの成長率が市場予想を上回り、有料AIサービス「Copilot」の利用者も大きく増加しました。
AIが実際の売上や利益として形になり始めていることが評価され、株価は大幅上昇となりました。
Amazonもクラウド事業が好調で高い評価を受けています。
一方でMetaは設備投資をさらに拡大したものの、フリーキャッシュフローが大きく減少しました。
「投資していること」は分かるものの、「その成果」が見えにくいとして市場は厳しい評価を下しています。
Appleも供給制約や中国事業の弱さが意識され、大きく売られました。
AI関連企業と一括りにされがちですが、市場はすでに「AIをやっている会社」と「AIで利益を生み出せている会社」を明確に区別し始めています。
とはいえ、多くの個人投資家は「どの企業が勝つか」を毎回当てる必要はありません。
S&P500やNASDAQ100、全世界株式には、これらの企業がすべて組み込まれています。
勝者を予想するのではなく、勝者を自然に保有できる。
これこそがインデックス投資の大きな強みだと改めて感じさせられる決算シーズンでした。
日経平均は大荒れ。それでも1週間を終えてみれば…
日本市場も今週は激しい値動きとなりました。
週明けの月曜日、日経平均株価は2,500円を超える急落でスタートします。その後も火曜日、水曜日と下落が続き、一時は61,000円台前半まで下落しました。しかし木曜日に反発すると、金曜日には2,400円を超える大幅高となり、一時65,000円台を回復。最終的には64,362円で週を終えました。
これだけ見ると壮絶な1週間だったように感じますが、振り返ってみると「大きく下げて、大きく戻した」だけとも言えます。
相場が荒れている最中は冷静さを失いがちですが、週足で見れば意外と落ち着いた結果になることは珍しくありません。だからこそ、日々の値動きだけを見て一喜一憂しないことが大切です。
一方で、市場の警戒感はまだ完全には消えていません。
日本版VIXとも呼ばれる日経平均VIは依然として高い水準にあり、大きく反発した後でも投資家心理は慎重なままでした。
キオクシアが象徴した「個別株投資」の難しさ
今週、日本市場で最も注目を集めた銘柄の一つがキオクシアでした。
月曜日にはストップ安まで売られたかと思えば、金曜日には一転してストップ高。そのまま決算発表を迎えた後は、時間外取引で再び下落するという、まさにジェットコースターのような1週間となりました。
決算の数字だけを見ると驚異的です。
4〜6月期の最終利益は前年同期比46倍、7〜9月期の会社予想も前年同期比31倍という、普通では考えられないほどの利益成長でした。
さらに8,000億円規模の自社株買いと株式3分割まで発表されています。
それでも株価は下落しました。
理由は単純で、市場予想に届かなかったからです。
株式市場では「利益が大きく伸びたか」よりも、「市場の期待を上回ったか」が重視されます。どれほど優れた決算でも、期待値がそれ以上に高ければ株価は下がってしまうのです。
この一週間を見ていると、個別株投資の難しさがよく分かります。
決算の内容を分析し、市場予想を把握し、さらに投資家心理まで読み切らなければならない。数字だけを見て「すごい決算だから上がるはず」と考えても、その通りにはならない世界です。
「高いときは欲しい、安くなると怖くなる」という心理
株式投資では、いつも不思議な現象が起こります。
株価が8万円、10万円と上昇していた頃には、「もっと上がる」「買いたい」という声が多く聞かれます。
しかし、実際に株価が3万円台まで下がると、今度は「怖いから買えない」という人が増えてしまいます。
もちろん、恐怖を感じるのは自然なことです。
値下がりしている最中に買うのは、誰にとっても勇気が必要です。
だからこそ、個別株で安値を狙い続けることは簡単ではありません。
一方、インデックス投資では事情が少し違います。
キオクシアのような企業は日経平均やTOPIX、全世界株式にも組み込まれています。
そのため、「この決算は市場予想を上回るのか」「来週は上がるのか」と毎回予想する必要はありません。
良い企業が長期的に成長すれば、その恩恵を指数全体として受け取ることができます。
「当てに行かない」という選択は、決して逃げではありません。
消耗戦から降り、自分に合った戦い方を選ぶことも立派な投資戦略なのです。
日銀は据え置き、それでも長期金利は上昇
今週の日銀金融政策決定会合では、政策金利は1%で据え置かれました。
これは市場の予想通りで、大きなサプライズはありませんでした。
ただし、注目すべきなのは日本の長期金利です。
30年ぶりともいわれる高い水準まで上昇しており、アメリカと同じように債券市場では慎重な見方が強まっています。
株式市場は企業業績への期待を織り込みながら上昇を目指す一方で、債券市場はインフレや財政への警戒を続けている。
株と債券が異なるメッセージを発している点は、今後も意識しておきたいポイントです。
円高で資産が減ったように感じた理由
今週、多くの人が最も驚いた出来事は、急激な円高ではないでしょうか。
政府・日銀による為替介入とみられる動きがあり、わずか1日で5円近く円高が進みました。
米国株や全世界株に投資している人の多くは、株価だけでなく為替の影響も受けています。
たとえ現地の株価がほとんど変わっていなくても、円高になれば円換算した評価額は下がります。
そのため、証券口座を開いた瞬間に「資産が減っている」と感じた人も多かったはずです。
しかし、この為替の動きを事前に当てることは、プロでも極めて困難です。
「来週は円高になる」「来月は円安になる」と予想して投資を繰り返しても、その通りになる保証はありません。
だからこそ長期投資では、「為替を当てる」ことよりも、「為替が読めない前提で資産配分を考える」ことのほうが重要になります。
読めないものを無理に当てようとしない。
それだけでも相場に振り回される回数は大きく減るはずです。
「投資キャンセル界隈」が増えている理由
今週、SNSなどでも話題になった言葉があります。
それが「投資キャンセル界隈」です。
これは、投資をしたほうが良いことは分かっている。NISAにも興味はある。それでも、なかなか最初の一歩を踏み出せない人たちを指す言葉です。
きっかけとなったのは、日本経済新聞で紹介された記事でした。
記事によると、20代でNISA口座を保有している人は26.4%。さらに、その中でも1年間まったく買い付けをしていない人が35.7%もいるため、実際に投資をしている20代は全体の2割にも届かないという状況です。
では、なぜ始められないのでしょうか。
理由として挙げられていたのは、「値動きが怖い」「調べる時間がない」「SNSの情報が多すぎて何を信じればいいか分からない」、そして最も多かったのが「何を買えばいいのか分からない」というものでした。
確かに、NISAの成長投資枠だけでも対象商品は2,000本以上あります。
初めて投資をする人が、その中から「正解」を選ぼうとするのは簡単なことではありません。
99点で十分という考え方
こうした「何を買えばいいか分からない」という悩みに対して、とても参考になる考え方があります。
それは、「100点を目指さなくていい」ということです。
世の中には、最高の投資先を探そうと何時間も情報収集を続ける人がいます。
AI関連株がいいのか、半導体なのか、それともNASDAQ100なのか。毎日のように比較し、ランキングを見ては悩み続けます。
しかし、本当に重要なのは「99点を取ること」です。
世界中に広く分散された低コストのインデックスファンドを、NISAを活用して毎月積み立てる。
たったそれだけでも、多くの人にとって十分に高い点数が取れる投資法だという考え方です。
今週だけを見ても、それはよく分かります。
Microsoftが大きく上昇した一方で、Metaは下落しました。
キオクシアはストップ安からストップ高まで乱高下しました。
政府・日銀による為替介入も、多くの市場関係者が予想できませんでした。
未来を正確に当て続けることは、誰にもできません。
だからこそ、完璧な100点を狙うより、再現性の高い99点を積み重ねるほうが現実的なのです。
投資で浮いた時間は、自分自身への投資に使う
この考え方には、もう一つ大切なポイントがあります。
それは、「浮いた時間を人生の別のことに使う」ということです。
毎日株価を追いかけ、どの商品を買うか迷い続けるよりも、本業で成果を出して収入を増やしたり、副業に挑戦したりするほうが、長い目で見れば資産形成に与える影響は大きいかもしれません。
特に20代や30代前半であれば、自分自身の市場価値を高めることは、投資のリターン以上の価値を生む可能性があります。
資格取得に挑戦する。
新しいスキルを身につける。
社内公募や転職にチャレンジする。
そうした経験は、将来の収入を押し上げる大きな武器になります。
実際、文字起こしの中でも、会社員として働きながらMBA取得に挑戦した経験が紹介されています。
資格そのものが人生を変えたというより、挑戦した過程で考え方や行動が変わり、それが転職やキャリアアップにつながったという内容でした。
これは投資にも通じる話です。
どの商品を選ぶかに何百時間も使うより、自分の収入を上げる努力をしたほうが、将来投資に回せる資金は確実に増えていきます。
投資はもちろん大切ですが、人生には投資以外にも価値のある時間の使い方がたくさんあります。
世界を見渡すと、韓国市場は歴史的な乱高下
視野を世界に広げると、今週最も激しい値動きを見せたのは韓国市場でした。
韓国総合株価指数(KOSPI)は1日で17.91%も上昇し、指数算出以来最大の上昇率を記録しました。SKハイニックスやサムスン電子といった半導体関連銘柄が市場をけん引しています。
ところが、この数字だけを見ると実態を見誤ってしまいます。
実は週前半には2営業日連続でサーキットブレーカーが発動するほど急落しており、7月全体では22%を超える下落となっています。
「史上最大の上昇」と聞くと強い相場を想像しがちですが、その裏では歴史的な急落が起きていたわけです。
結局のところ、1日だけの値動きで相場を判断することはできません。
韓国市場は半導体企業への依存度が非常に高く、サムスン電子とSKハイニックスだけで指数の半分以上を占めています。指数全体が特定の業種に大きく左右される構造であることが、今回の乱高下にも表れたと言えるでしょう。
一方で、ヨーロッパ市場は比較的堅調でした。
4〜6月期のGDPが市場予想を上回り、主要株価指数も上昇。取引時間中には過去最高値を更新する場面も見られました。世界全体を見渡すと、それぞれ異なる要因で市場が動いていることがよく分かります。
新NISAの人気投資信託は軒並み下落。それでも慌てる必要はない
ここからは、新NISAで人気の投資信託が今週どのような値動きを見せたのかを確認してみましょう。
結論から言えば、多くのファンドがマイナスとなりました。
特に半導体関連の値動きを反映するSOX連動ファンドは10%を超える下落となり、厳しい一週間だったと言えます。
ただし、この数字だけを見て悲観するのは早計です。
投資信託の基準価額にはタイムラグがあります。さらに、今週は急速な円高が進んだことで、海外株式そのものだけではなく為替の影響も大きく反映されています。
例えば韓国株ファンドは大きく下落していますが、その背景には週前半の急落が基準価額に反映されている一方で、週末に起きた17.91%の急反発はまだ十分に織り込まれていません。
SOXについても同じです。木曜日には大きく反発したものの、それまでの急落をすべて取り戻すには至らず、週間では大幅なマイナスとなりました。
「オルカンの方がS&P500より下がった」は異常ではない
今週のランキングを見て、「オルカンの方がS&P500より下落率が大きいのはなぜだろう」と疑問に感じた人もいるかもしれません。
全世界株式は分散されているのだから、値動きも穏やかになるはずだと思う人は多いでしょう。
しかし、今回は新興国市場、とりわけ韓国市場が大きく下落した影響を受けました。
オルカンには韓国を含む新興国株も組み入れられています。そのため、S&P500だけに投資している場合よりも、一時的に下落率が大きくなることがあったのです。
ここで勘違いしてはいけないのは、「分散=常に値下がりが小さい」という意味ではないということです。
分散投資は、毎回すべての資産が均等に動くわけではありません。
ある年はアメリカが好調で、新興国が足を引っ張ることもあります。
逆に、新興国が大きく伸びてアメリカを上回る年もあります。
そのどちらにも対応できるように世界全体へ投資する。それがオルカンの考え方です。
短期的な順位だけを見て、「やっぱりS&P500の方が良かった」と判断するのは少し早いでしょう。
2年半という視点で見ると、景色はまったく違う
一週間だけを見ると不安になる相場でしたが、視点を少し長くすると見え方は一変します。
2024年の新NISA開始時から現在までを振り返ると、多くの人気ファンドは依然として大きなプラスを維持しています。
仮にS&P500へ5,000万円を投資していた場合、その資産は約9,000万円まで増えています。
オルカンもほぼ同水準まで資産が成長しており、わずか2年半という期間を考えれば十分すぎるリターンと言えるでしょう。
ところが、人間は不思議なもので、これだけ増えていても「もっと伸びる商品があったのではないか」と考えてしまいます。
その代表例がSOX指数です。
7月初めには300%を超える驚異的なリターンを記録していましたが、わずか1か月で大きく調整し、利益のかなりの部分を失いました。
ハイリターンの商品は、ハイリスクでもあります。
上昇局面だけを見ると魅力的ですが、実際に保有していると急落局面で強いストレスを受けることになります。
最終的なリターンだけを見て商品を選ぶのではなく、自分がその値動きに耐えられるかどうかも、投資では非常に重要なポイントです。
資産形成の後半は「増やす」より「守る」が重要になる
2020年からの成績を見ると、FANG+などのテーマ型ファンドが非常に高いリターンを記録しています。
数字だけを見ると、「最初からFANG+だけ買っておけば良かった」と思うかもしれません。
しかし、その期間にはコロナショック、急激なインフレ、世界的な利上げ局面、そしてAIブームによる急騰と急落がありました。
その激しい値動きを何年も耐え続けられた人だけが、このリターンを手にできたのです。
さらに、資産形成が終盤に近づくほど、「どれだけ増やすか」よりも「どうやって取り崩すか」が重要になります。
資産が大きくなるほど、数%の値動きでも金額は非常に大きくなります。
例えば1億円の資産なら、10%の下落で1,000万円が減る計算です。
その状況でも冷静に投資を続けられるのか。
出口戦略まで考えた資産配分を作ることが、資産形成後半ではますます重要になっていきます。
S&P500に現れた「15年ぶりのサイン」をどう受け止めるべきか
最後に、今後の相場を考えるうえで気になるデータを見ていきましょう。
今回話題になったのが、S&P500に現れた「15年ぶりのサイン」です。
これまで7月のS&P500は11年連続で上昇していました。しかし今年はわずか0.1%届かず、7月はマイナスで終了しました。
それだけでも珍しい出来事ですが、さらに今年は6月もマイナスだったため、「6月・7月ともに下落」という状況が2011年以来15年ぶりに発生したことになります。
過去のデータを見ると、このパターンが発生した年は、その後の8月から12月にかけても苦戦するケースが目立っています。
1950年以降では今年を除いて12回あり、そのうち年末まで上昇したのは4回だけ。平均リターンもマイナスとなっており、決して心強い数字ではありません。
さらに、8月と9月はもともと株式市場が弱くなりやすい季節として知られています。
夏休みで市場参加者が減り、売買が薄くなることや、秋に向けたポジション調整などが重なり、相場が不安定になりやすい時期です。
こうしたアノマリーだけを見ると、「しばらく株は危ないのでは」と考えてしまう人もいるでしょう。
それでも長期投資家が悲観し過ぎる必要はない理由
ただし、ここで忘れてはいけないデータがあります。
株価が調整する一方で、企業の利益予想はむしろ大きく上方修正されているのです。
S&P500採用企業の利益成長率予想は、年初時点から大きく引き上げられました。
つまり、株価は足踏みしているにもかかわらず、企業そのものは以前よりも稼ぐ力を強めているということです。
これは株式の割高・割安を示すPERにも影響します。
PERは「株価÷利益」で計算されるため、利益が増えて株価が変わらなければ、PERは自然と低下します。
言い換えれば、企業の実力が上がることで、株価の割高感が少しずつ解消されていく可能性があるということです。
歴史は「下げた後」をどう示しているのか
もう一つ興味深いデータがあります。
新しいFRB議長が就任した過去のケースでは、就任後3か月以内は全員が株価の下落を経験していました。
しかし、その先まで見ると景色は変わります。
下落した後の1年間では、75%の確率で株価は上昇しており、平均リターンも二桁のプラスとなっています。
つまり、短期的には調整が起きやすい一方で、その後には回復してきたケースが多かったということです。
もちろん、今回も同じ結果になる保証はありません。
アノマリーは未来を予言するものではなく、あくまで「過去にはこういう傾向があった」という参考情報に過ぎません。
だからこそ、このデータだけを根拠に売買を繰り返すべきではないでしょう。
「下がるかもしれない」ではなく、「下がっても驚かない」
長期投資家にとって、アノマリーを知る意味は少し違います。
重要なのは、「だから売ろう」と判断することではありません。
「もし下がっても、それは過去にもよくあったことだ」と冷静に受け止められるようになることです。
例えば、8月と9月は弱い傾向があると知っているだけで、実際に相場が下落したときの受け止め方は大きく変わります。
慌てて売ってしまうのか。
それとも、「想定内の値動きだ」と考えて積立を続けられるのか。
この違いが、長期では大きな差になります。
まとめ|調整局面こそ、長期投資家の姿勢が試される
今週は、FOMCや巨大ハイテク企業の決算、日本株の乱高下、急激な円高など、投資家心理を揺さぶる材料が次々と出てきました。
さらに、S&P500には15年ぶりのアノマリーも点灯し、「これから相場はさらに厳しくなるのでは」という見方もあります。
しかし、その一方で企業業績は依然として堅調で、利益予想は上方修正が続いています。
株価だけを見れば弱気材料が目立ちますが、企業の稼ぐ力まで含めて見ると、必ずしも悲観一色というわけではありません。
短期的な値動きを正確に予想することは、プロでも極めて難しいものです。
だからこそ、長期投資家にとって本当に大切なのは、「相場を当てること」ではなく、「相場が荒れても投資を続けられる仕組みを持つこと」です。
歴史を振り返れば、大きな調整局面はいくつもありました。しかし、そのたびに市場は新たな高値を更新してきました。
もしこれから8月、9月にかけて相場が弱含む展開になったとしても、それは長期積立を続ける投資家にとっては、悲観するだけの出来事ではありません。
むしろ、将来の資産形成に向けて、同じ優良企業をこれまでよりも安く買い続けられる時間になる可能性もあります。
市場はこれからも何度でも私たちを試してきます。
そのたびに相場を予想しようとするのではなく、自分が決めた投資ルールを守り続けること。それこそが、長期投資で最も大きな武器になるのではないでしょうか。

