ゴールド急落は買い時?最高値から20%下落した今こそ再考
最近、ゴールド(金)の下落が話題になっています。
直近3か月のパフォーマンスを見ると、日経平均はプラス12.7%、S&P500はプラス10.2%と堅調に推移している一方で、ゴールドはマイナス13.3%。さらに2026年1月につけた高値からの下落率はついに20%を超えました。
中東情勢は依然として不安定で、地政学リスクも残っています。それにもかかわらず、ゴールドだけが大きく売られている状況を見て、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
さまざまな意見が飛び交っています。
しかし私は、今回の下落だけを見てゴールドが終わったとは全く思っていません。むしろ今回の下落は、ゴールドの歴史から見れば十分に起こり得る範囲の調整だからです。
実際、過去には今回を上回る下落も何度もありました。そして過去には現在の上昇局面をはるかに超える600%以上の上昇相場も存在しています。
そこで今回は、
について詳しく解説していきます。
株は強いのにゴールドだけ下落。これは異常事態なのか?
まず確認したいのは、今回の下落が本当に異常なのかという点です。
ゴールドは2026年1月に5,558ドルの高値を付けた後、5月には4,447ドルまで下落しました。高値から約20%の下落です。
昨年、ゴールドが株式以上の上昇を見せていたことから、「もっと上がると思って買ったのに」と感じている人も少なくないでしょう。
株式投資をしている人からすると、20%の下落は珍しいことではありません。しかしゴールドの場合、「安全資産なのに20%も下がるの?」という印象を持ちやすいのです。
ここで重要なのは、「安全資産」という言葉の意味を正しく理解することです。
多くの人は安全資産と聞くと、「値下がりしない資産」「現金のようなもの」というイメージを持っています。しかし実際のゴールドは違います。
ゴールドは価格変動のある投資対象です。
安全資産とは、危機的状況で価値の保存手段として選ばれやすい資産であって、価格が下がらない資産ではありません。
実際、過去を振り返ると今回以上の下落は何度も起きています。
2013年には年間で約30%下落しました。
さらに2011年から2015年にかけては高値から安値まで約44%下落しています。
そして1980年から2001年にかけては、実に約63%もの下落を経験しました。
この歴史と比較すると、今回の20%下落は決して異常な暴落とは言えません。
しかも現在でも前年比では35%以上のプラス圏にあります。
短期的な値動きだけを見ると不安になりますが、長期の視点で見ると今回の下落はゴールドの歴史の中では十分想定内の出来事なのです。
なぜゴールドは下がっているのか?
では、なぜ今ゴールドは売られているのでしょうか。
主な理由は3つあります。
金利が高い
ゴールドは配当も利息も生みません。
一方で米国債や預金には利回りがあります。
そのため金利が高い局面では、「安全性を求めるなら利息の付く資産でも良いのではないか」という考えが強まりやすくなります。
さらに中東情勢の悪化によって原油価格が上昇すると、インフレ懸念が高まります。
インフレ懸念が高まれば中央銀行は利下げしにくくなり、場合によっては追加利上げの可能性も意識されます。
その結果、利息を生まないゴールドには逆風となるのです。
リスク回避ムードが後退している
市場は不安そのものではなく、「不安が悪化しているのか改善しているのか」を見ています。
停戦期待や和平の可能性が意識されると、安全資産からリスク資産へ資金が移動しやすくなります。
ゴールドから株式へ資金が流れるのは自然な動きとも言えます。
株式市場に魅力的な材料が多い
現在はAI、半導体、企業業績の改善など、株式市場には投資家を惹きつける材料が豊富です。
こうした状況では、地政学リスクが少しでも和らげば資金は株式市場へ向かいやすくなります。
ただし、これらはあくまで短期的な要因です。
短期の下落理由と長期の投資価値は分けて考える必要があります。
それでもゴールドが長期で強い理由
ゴールドは配当も利息もありません。
企業のように利益を生み出すわけでもありません。
それにもかかわらず、長期的には非常に優秀なリターンを残してきました。
ワールド・ゴールド・カウンシルのデータによると、1971年から2024年までのゴールドの年率リターンは約8%です。
途中で大きな暴落もありました。
長期間停滞した時期もありました。
それらを全て含めても年率8%という結果を残しているのです。
さらにワールド・ゴールド・カウンシルの長期期待リターンモデルでは、今後15年間の期待リターンは年率5.2%とされています。
守りの資産として考えれば十分に魅力的な数字でしょう。
ゴールド需要はまだ崩れていない
価格が下落しているからといって、需要が消えたわけではありません。
2026年第1四半期の金需要は全体で1,231トンとなり、前年同期比で2%増加しました。
金額ベースでは1,930億ドルとなり、四半期ベースで過去最高水準となっています。
特に注目したいのが中央銀行の購入です。
中央銀行による金購入は前年同期比3%増、前四半期比17%増となっています。
中央銀行は短期的な値動きを狙って売買する投資家ではありません。
外貨準備の分散や通貨リスクへの備えとして長期目線で購入しています。
こうした需要が続いている限り、ゴールドの長期的な投資テーマが終わったとは言いにくいでしょう。
過去には600%以上の上昇相場もあった
現在のゴールドは2022年から2025年にかけて約170%上昇しました。
これだけでも十分大きな上昇ですが、過去にはさらに強烈な上昇相場が存在しました。
1976年から1980年にかけては約518%上昇。
2001年から2011年にかけては約643%上昇しています。
特に2001年から2011年は米国株が苦戦した時期でもありました。
株式が弱い局面でゴールドが資産を支える役割を果たしたのです。
この歴史を見ると、ゴールドを長期保有する理由は今でも十分に残っていると言えるでしょう。
今は仕込み時と言えるのか?
結論から言えば、短期と長期で考え方を分けるべきです。
短期で利益を狙うのであれば、今が底かどうかは誰にも分かりません。
明日さらに下がる可能性もあります。
一方で、長期でポートフォリオの一部として保有したい人にとっては、下落局面で少しずつ組み入れることは十分検討材料になります。
なぜなら、
加熱感がかなり冷めてきたこと。
価格は下がっても需要は崩れていないこと。
資産全体の一部として保有するなら価格変動の影響を抑えられること。
こうした理由があるからです。
ただし重要なのは、底値を当てにいく投資ではないということです。
ゴールド20%下落で資産全体はどれだけ減るのか
投資判断ではゴールド単体ではなく、資産全体で考えることが重要です。
例えばゴールドの保有比率が5%の場合、ゴールドが20%下落しても資産全体への影響は約1%です。
10%保有している場合でも影響は約2%です。
一方で30%保有している場合は約6%の影響になります。
つまり同じ20%下落でも、自分がどれだけ保有しているかによって受けるダメージは大きく変わるのです。
ゴールドは全資産を投じる対象ではありません。
ポートフォリオの一部として保有する資産なのです。
ゴールドはポートフォリオでどう位置付けるべきか
ゴールドは長期で一定のリターンを生み出してきました。
しかし資産形成の主役にするべきかと言われれば、私はそうは考えていません。
なぜなら、ゴールドは何も生産しない資産だからです。
株式は企業が利益を生みます。
債券は利息を生みます。
不動産は家賃収入を生みます。
しかしゴールドは持っているだけでは何も生み出しません。
だからこそ資産形成の主役は株式です。
その一方で、ゴールドには株式にはない重要な役割があります。
それはポートフォリオの守備力を高めることです。
ゴールドは、
という役割を持っています。
攻撃力ではなく守備力を高めるために保有する資産なのです。
専門家の間では5%前後、あるいは5〜10%程度の保有比率が目安として語られることが多くあります。
この程度の比率であれば、大きく下落しても資産全体への影響は限定的でありながら、将来のリスクへの備えとして機能します。
まとめ|下落の今こそ問われるのは「ゴールドの価値」ではなく「自分の方針」
結局のところ、今ゴールドを買うべきかどうかよりも大切なことがあります。
それは、自分のポートフォリオの中でゴールドをどう位置付けるかです。
ゴールドは短期的には普通に大きく下がる資産です。
今回の20%下落も歴史的に見れば珍しい出来事ではありません。
一方で、1971年以降の実績リターンは年率約8%。中央銀行の購入も続いており、長期需要も依然として健在です。
だからこそ重要なのは、
自分の資産の何%をゴールドにするのか。
その比率なら20%下落しても耐えられるのか。
生活防衛資金と完全に分けているのか。
この3つを事前に決めておくことです。
私ならまずゴールドの役割を決めます。そして一括投資ではなく、分割投資や積立投資で価格変動をならしていきます。
値動きを当てることはできません。
しかし、自分の投資ルールを決めることはできます。
今回の下落で問われているのは、ゴールドの価値ではありません。
自分自身の投資方針です。
「なぜ持つのか」
「何%持つのか」
「どう買うのか」
「どこまで下がっても持ち続けられるのか」
これらが決まっていれば、下落局面でも慌てることはありません。
ゴールドは長期で見れば魅力のある資産です。
ただし、正しい役割を理解し、適切な比率で保有してこそ意味があります。
今回の下落をきっかけに、ぜひ自分自身のポートフォリオと向き合ってみてはいかがでしょうか。

